180日超入院・透析食の患者負担やめて 東京勤医会
患者会・労組と共同署名厚労省へ
〇二年四月の診療報酬改定で拡大された「特定療養費」。全日本民医連は患者から徴収せず、撤回させるたた かいを提起。「一八〇日超の減額」実態調査をすすめています。たたかいの先陣を切って、東京勤労者医療会(吉田廣海理事長)と同労組、腎透析患者会(腎友 会)が七月九日、厚労省に「一八〇日超入院患者の自費徴収と外来透析患者の食事代自己負担を止めて、診療報酬の再改定を」求め、署名一万四三五八筆を添え て要請しました。代々木病院・みさと協立病院・東葛病院の職員や患者三一人が参加。小池晃参院議員も同席した場で、厚労省側は「他からも意見が出ている。 考えなければ」と発言。この署名は昨年秋から独自にとりくんできたものです。(小林裕子記者)
「たたかいにしよう」で三者が一致
昨年九月、勤医会理事会は「透析食の自己負担化、一八〇日超入院時の差額徴収は当面行いません」と声明しました。
この決定までに、理事会や職場の論議、友の会や患者会との話し合いが何度ももたれました。四月改定で勤医会全体 の収益減少は年間五億、この決定を執行すると法人負担はおよそ二〇〇〇万円と見込まれました。腎友会の患者さんには「病院がたいへんだったら払っても…」 の声もありました。しかしつらい治療のなかでもよく勉強し、運動もすすめている患者さんたちに職員の共感が深まり、「たたかいにしよう」で一致。労働組合 とも共同して署名運動が始まりました。
署名は広がりました。「職員はどこでも署名用紙を持って行きました。実家に帰って署名してもらった若い看護師もいました」と、代々木病院の松井保子副総看護長は言います。「患者さんも病院も苦しいことを職員が理解したから」。
勤医会労組書記次長の大竹明雄さんは「署名は都内の労組だけでなく全国集会でも訴えました。日本の医療や病院の経営が危機にあるいま、診療報酬改善のたたかいに理事会、友の会・患者会、労組が共同することが大事」とこの運動の意義を強調しています。
矛盾多い入院一八〇日超の減額
代々木病院に入院し、一八〇日超減額対象になった一人暮らしの男性(60)の場合です。
脳出血を発症、生命の危機は脱しましたが、マヒ・失語の後遺症が残り、療養病棟に移りました。話を理解することはできますが、言葉が出にくく、相手に自分の意志を伝えることが困難でした。
リハビリに励んだ結果、失語より先にマヒが改善。車イスを使わず歩けるようになった時点で、減額対象になってしまいました。しかし、電話もかけられなくては一人暮らしに戻れません。失語症のリハビリはその後も続きました。
松井副総看護長は、「あまりに機械的な算定です。他院では簡単に自己負担させたり、一八〇日超減額対象になりそうな患者の入院を受けないという話も聞こえてきて、心配です」と語っています。
みさと協立病院(療養病床一二〇床)の中川一秀事務長も「当院にも一八〇日超減額対象となる人が六人。いずれも リハビリで車イスが不要になったけれど、痴呆があって自宅に帰れず施設入所待ちしている患者さん。動ける痴呆の人を自宅で看ることはとても困難。スタッフ にとっては、リハビリに努力した結果が病院の持ち出し増か、患者の負担につながる」と矛盾をつきます。
コンビニ弁当は透析食には不適
代々木病院の管理栄養士・篠木健さんは「透析食についての患者アンケートに、『有料になったら食べない』との回 答があった。透析中に、ある人は病院の食事をし、ある人はコンビニ弁当を食べ…という状態では、療養の現場に混乱が起きる」。それに「コンビニ弁当や外食 は、透析食として不適切。塩分が多く栄養バランスも悪い」と指摘します。
腎友会の山崎旦夫さんは「多くの病院では透析食は有料。患者にとって八〇〇円の一三回分は大きな痛手です。この運動が他の病院にも広がってほしい」と訴えています。
(民医連新聞 第1313号 2003年8月4日)
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